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フェイクニュース

本当の事を隠す嘘は「悪い嘘」「良い嘘」に関わらず不幸を招く

更新日: 2018年10月27日

最初の出会いは所謂ナンパのようなものでした。そんな出会い方でも、掴み掛けた幸せな日々もありました。勿論、彼と過ごしていく中で、私には理解できなかった嘘もあります。

しかし、その優しい嘘だったと思いたい嘘に安心してしまった私は、彼の思いとは裏腹に仕事に打ち込みすぎてしまいました。

もう少し早く相手の性格を理解していれば、大切な人を失うこともなかったと思います。そんなおよそ3年間の日々を書かせて頂きます。

出会い

私が営業という仕事を始めて、まだ間もないころの話です。企業回りや個人宅への訪問など、所長やチームリーダーに連れられての研修も終わり、今から1人で顧客を増やさなければならなくなった時期のことでした。

その頃はまだ、仕事的にも時間がある時期でしたので、会社の飛び込みもしていました。私が彼と出会ったのは、その仕事関係で飛び込みをしていた時のことでした。

彼は、地場の中堅企業の宅配業者で、グループごとに午前と午後に分けて宅配をして回るドライバーさんでした。

初めて会った時の彼の第一印象は「感じのいい人」でした。私がそこの営業所に行くのが毎週水曜日でしたので、大体週に1度は、お昼休みに彼を見かけていましたが、必ずしも会うことができるとは限りませんでした。
又、他にも私の用事はあり、30分間くらいは集中的に他の方に説明やらアンケート用紙を配ってはお近づきになろうと必死でしたので、彼のことが目に入らなかったのもあるかもしれません。

初めて会った日から2ヶ月程が経ち、帰ろうとしていた時のこと。外に出ると若い人達のグループが立ち話をしていました。その中の一人から、「もう帰るん?」と聞かれて、「はい、帰ります。失礼しました。」と振り向くと、第一印象「感じのいい人」だった彼もそこにいました。

私はもう完全に彼のことを忘れていましたので、正直に、「あ、帰りますけど、この前、一度、お会いしましたよね。お名前を忘れてしまいましたので、すみませんが名刺交換して頂けますか?」と言いました。
すると彼は笑いながら、「○○さん(私の苗字)、ひどいやん。じゃあ、特別な名刺あげるから。捨てないでね。」と言って名刺を渡してくれました。しかも、「電話番号も書いておくけん。」と、その場で電話番号も書いてくれました。

私もその当時はお付き合いしている人がいなかったので、軽い気持ちで、「では、今日の20時頃電話しますが、よろしいですか?」と笑いながら言ったところ、「ほんとにするとね?」と言われましたが、私は笑って会釈をしてその場を立ち去りました。

実際に私も20時に間に合うかわかりませんでしたので、「相手は電話するとは思ってないだろう。」と思いながらの行動でした。しかし、無事20時に間に合ってしまった私は、心を決めて20時5分ごろに電話を掛けました。
すると、本人がすぐに出て、「5分前に電話の前で待っとったのに、5分後にかけるなんて、やられたー。」と言われました。今考えてみると、それも嘘だったのかもしれません。

良い意味で言うならば、彼はそういった嘘も含めて、女性に厚意を持たせるのに長けた人だったのかもしれません。

私は、あまりしゃべったことのない人とこんなにも楽しく電話でしゃべることが出来るなんて不思議でした。まるで、魔法にかかったようでした。

交際

それからはとんとん拍子にお付き合いが始まりました。彼には当初お付き合いをしている人がいましたが、私と付き合うことになり、その方とは別れてしまいました。そのことが唯一気にはなりましたが、交際は順調に進んでいきました。

そして、約1年間のお付き合いを経て、私は彼のご両親に、彼は私の両親に会いました。当時、結婚までは間近だと私は思っていましたが、そう思っていたのは私だけだったのかもしれません。
それから私は安心して仕事をしました。何故なら、仕事関係で知り合った私たちは、彼の周りも、私の周りも祝福モードでいっぱいだったからです。

転機

しかし、狭い地域内のことではありましたが、約3年ごとに転勤のあった彼は、ある時私の住んでいる地域の営業所へ転勤してきました。それが、そもそもの間違えだったのかもしれません。

勿論、最初は私も歓迎しました。そして、彼の仕事の為に、近所でグループを作りました。ご近所の方にも「助かる」と好評でした。しかし、私は知らなかったのです。そこの営業所は、規模が今までのところの倍以上で、アルバイトさんやパートさんも働いており、荷物が多い時などは、彼がアルバイトさんをトラックに同乗させて回っている事を。

近くに大学がありましたので、アルバイトさんはそこの学生さんが多かった様です。母も心配していました。「今日も女の子を一緒に乗せて回ってきたよ。」と。私はそんなに気にはしていなかったので、「ふーん。」と受け流していました。と言うよりも、私の仕事が順調に進んでいたこともあり、それどころではなかったのです。

私の方も仕事で夜が遅くなり、休みの日には接待ゴルフに駆り出される事もあり、彼との距離がだんだん遠ざかっていくのを感じていましたが、「私にはちゃんと交際している人がいる」と思うと、仕事にもやる気が出てくるのを感じていました。彼にもそのことはちゃんと説明していました。

しかし、彼の方は違いました。私が彼と会えない時間を仕事でを埋めていたように、彼はその時間を他の女性に使っていたのです。

私の母が言ったとおりの事が起きてしましました。彼とはいつも、朝、出勤するときに大体同じ道を車ですれ違っていました。その時には、お互いに「おはよう」の気持ちを込めて、何かしら合図をしていました。たまにすれ違わない時も、「遅刻するなよー。」など、心で想い合っていると信じていました。
しかし、仕事の先輩が彼の妹さんと知り合いで、「あんたさ、○○君最近、家に帰ってないらしいよ。」と聞いた話を私に教えてくれました。

私は彼の職場に電話しました。「時間があったら話す。」ということでしたので、久しぶりに彼に会ったところ、「好きな人が出来た。私のせいだ」と言うのです。
「お前が夜も、休みの日もどこかの男と遊びにいくけんたい。」と。私はその一言にガッカリしました。出勤時間に車ですれ違っていた時の嬉しさ、彼のおかげで仕事を頑張れたことなど、正直に話しましたが、もう私には自分は必要ないと言うのです。「話にならないね。」私が最後に言った言葉です。

その後

後日改めて彼のお母様に電話をして、その旨を連絡しました。「お世話になりました。」と。すると、「過保護な親だと思われるかもしれないけど、あの子は一番上の長男で、下に弟と妹がいるの、知ってくれてるわよね。」とお母様は私に聞きました。

私は確かに、「はい。」と答えました。お母様は「寂しがり屋なのよ。だから、あなたの前にも次々と女性と付き合っていた。

でも、私たちに紹介してくれたのは、あなたが初めてだったからね。それだけ、あの子があなたとのことを本気で考えていたことは間違いないから。自信を持ってね。」と言って下さいました。私は涙が止まりませんでした。

振り返って

最初、彼と出会った頃は、彼のあの言動は女性に対してだけなのだろうと勘違いしていました。しかし、よくよく考えてみると、職場においても、女性だけではなく、同僚や自分の知っている相手に対しても、気持ちが良い応対や言葉のかけ方をしており、彼が嘘をつく時にも、『良い?』と『悪い嘘』があったことに、別れてから気が付きました。
しかし、私には理解が出来なかったのです。

私が嫌いなのは『悪い嘘』、そして『良い嘘を理解することが出来なかった私自身』です。先にも書きましたが、初めて彼に電話をした時、「5分前から待っていた」と言われましたが、もし私が電話をしなければどうなっていたのか?今でも分かりませんが、ひょっとすると、もっと彼は私に夢中になっていたのかもしれません。それとも、「昨日はごめんなさい。」と言って、付き合うこともなかったかもしれません。

『良い嘘』、『優しい嘘』、『悪い嘘』、と嘘にもいろいろありますが、私は根本的に嘘が嫌いです。

嘘というのは、本当の事を隠しまうからです。

本当の事を隠すということは、大切な人との間に壁を築くことにも繋がります。そんなものは優しさだとは思いません。これは恋愛に対してだけではないと思います。仕事でもそうだと思います。

仕事で私が失敗しても、私には直接言ってくれない人もいました。それは私に対する優しさで言わないのではなく、私を見捨てているから何も言わないのです。

本当の事を言わないという点においては、嘘と同じです。昔から「嘘つきは泥棒の始まり」というではありませんか。

勿論、「嘘も方便」だという言葉もあります。それでも、皆が皆、嘘を受け入れられる訳ではありません。嘘によって救われる人もいれば、傷つく人もいます。

嘘をつく時には、例えそれがその人を想ってのことだったとしても、一歩立ち止まって考えてみるべきだと、私は考えます。